大阪で行われた、ミャンマー代表選手の保護などを日本政府に求める在日ミャンマー人らによるデモ (c)朝日新聞社
大阪で行われた、ミャンマー代表選手の保護などを日本政府に求める在日ミャンマー人らによるデモ (c)朝日新聞社

 クーデターにより国軍が権力を掌握し、市民への弾圧が続くミャンマー。日本国内でも、ミャンマーのサッカー選手が帰国を拒否して政治亡命を求め、難民申請を行ったことは記憶に新しい。こうした政情下、ミャンマー選手団は東京五輪にやってくるのだろうか。五輪の事前キャンプの窓口として5年ほど前からミャンマーオリンピック委員会と話し合いを重ねてきた星槎(せいさ)グループ・世界こども財団に、現状を聞いた。

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 7月2日、神奈川県は箱根町と小田原市で予定していたミャンマー五輪代表選手団の事前キャンプを中止すると発表した。当初の計画では、ミャンマー選手団は7月中旬から、宿泊施設のある星槎大学箱根キャンパスを拠点として練習を行い、陸上競技については小田原市の城山陸上競技場を使用する予定だった。中止の理由は、新型コロナ感染症が拡大するなか、代表選手の選出が遅れていること。ミャンマー選手団は直接、選手村に入ることになった。

「国内の事情はいろいろあるでしょう。でも、そんな状況だからこそ、『ぜひ、来てください』と言ってきた。選手たちの声も聞きたかった。やむを得ないのかなとは思いますが、残念です」

 こう語るのは、世界こども財団事務局の石井洋祐課長だ。

 ミャンマーが事前キャンプに関する協定を神奈川県、小田原市、箱根町、大磯町などと結んだのは2018年。これは、長年ミャンマーと友好関係を築いてきた星槎グループの働きかけで実現したものだった。幼稚園から大学まで、さまざまな教育機関を運営する星槎グループは、スポーツを通じた青少年育成を世界各国で力を入れてきた。その国の一つがミャンマーだった。

「ミャンマーとの交流を本格的に行うようになったのはここ10年弱くらいです。留学生を受け入れたり、ミャンマーの柔道代表チームを招待したりして合宿を行ってきました」(石井課長、以下同)

■政変で「最悪のケース」も想定していた

 事前キャンプの中止とミャンマーの政変は関係ないのだろうか。

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「政変の影響はない」とミャンマー五輪委