■コロナ対策で外部との接触は難しい

 石井さんは長年の経験から、「技能実習生や留学生もそうですが、海外から人を受け入れる際は常に、何が起こるかわからないというリスクは当然ある」と、淡々と語る。

「ミャンマーに限らず、国内でさまざまな対立を抱えている国は多い。難民申請が出される、ということはどこの国でもあり得る。国政に対して、個人の選手がどう思っているかを事前に知ることは受け入れ側にはとてもできない。表向きはそう言っていなくても、思っているかもしれません」

 前回のブラジル五輪では、男子マラソンで2位だったエチオピアのフェイサ・リレサ選手が政府に抗議するポーズをとりながらゴールインし、その後、アメリカに亡命した。

 ただし、今回の大会では新型コロナ対策で選手の行動が相当制限されるので、外部と接触して亡命の意思を示し、難民申請を出すのは難しいのではないか、とみる。

「ミャンマーのオリンピック委員会が選手を送り出し、それを受け入れるから軍事政権に賛成しているのか、と問われれば、そんなことはない。あくまで政治とは切り離して、選手たちを応援していこう、というのがわれわれのスタンス。それが平和の祭典、オリンピックの本来のかたちだと思いますから」

 石井さんの勤める世界こども財団はミャンマーのホストタウン、大磯町にある。

「いまは規制が非常に厳しいですが、事前キャンプで来なくても、大磯町はホストタウンなので、ミャンマー選手たちが日本にいるときに、励ませる機会があればいいなと思っています」

(文/AERA dot.編集部・米倉昭仁)