「骨粗鬆症を発症しやすい年齢に、良性発作性頭位めまい症が多いという報告もあります。ほかに、運動習慣がない人や、同じ姿勢で寝ることが多い人なども起こりやすいといわれます」

 診断のためには、目の動き(眼振)を調べる検査、からだのバランス(平衡機能)を調べる検査、聴力検査、脳の状態を調べる画像検査などをおこなう。眼振とは、無意識に起こる眼球の揺れのことで、めまいが起こっているときには特徴的な眼振がみられる。眼振検査では、患者に特殊な眼鏡を装着し、頭を動かしたときの眼振をみることで三半規管に異常があるかどうかを調べる。

「耳石が三半規管のどこに入っているかで目の動きが異なります。めまいを専門にみる医師であれば、眼振をみることで、耳石の場所はほぼ100%わかります」(肥塚医師)

 めまいの診断では問診も重要だ。「どのようなときにめまいが起こるか」「一回のめまい発作はどのぐらい続くか」「一度だけか、繰り返すか」「めまい以外にどのような症状があるか」などを正確に聞き取ることが大切だと鈴木医師は話す。

■医師が頭を動かし耳石を排出する

 例えば、朝、起き上がったらめまいがしたが、しばらくしたら治まった。その後、洗濯物を干したら再びめまいがした。すぐ治まったが、またほかの動作によりめまいがした。このように一日めまいが繰り返された場合、医師が「めまいはどのぐらい続いていますか?」と聞くと、「一日中続きました」と答えてしまう患者もいるという。

「本当に一日中めまいが続いたのか、一回のめまいはすぐ治まり、また起こることを繰り返したのか、正確に聞き分けることが正しい診断のためには重要です」(鈴木医師)

 症状が強い急性期には、抗めまい薬や吐き気止めが処方されるが、薬物療法は症状を抑えるためのものであり、めまいそのものを治すわけではない。良性発作性頭位めまい症の治療では、「浮遊耳石置換法」という理学療法をおこなう。これは、医師が眼振を確認しながら患者の頭を動かし、耳石を三半規管から排出させる方法で、この治療により「良性発作性頭位めまい症の約7割が改善する」と肥塚医師はいう。ただし、この治療はめまいをみるすべての医師ができるわけではないため、めまいの専門的な知識と治療技術を有する「めまい相談医」を受診することが望ましい。

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