この記事の写真をすべて見る

 5月7日、出版社「扶桑社」が運営するニュースメディア「ハーバー・ビジネス・オンライン」(以下、HBO)が今後すべての記事配信を停止すると発表した。HBOは2014年に「『忖度しない』情報ニーズに応えるオピニオンメディア」として開設。リベラルから保守までウイングを広げた政治記事やカルチャー、スポーツなど幅広いニュースを配信してきた。だが、開設7年目にして突然の配信停止。その背景には何があったのか。

【写真】ハーバービジネスオンラインが輩出した有名ジャーナリストといえばこの人



*  *  *
「赤字メディアではありましたが、つぶすほどではなかったはずです。いわゆる“大人の事情”があったと聞いています」

 こう話すのは扶桑社のある編集者だ。

 編集部の公式発表では配信停止の理由は明示されず、「お知らせ」としてこう記されている。

<約7年間にわたり、どんどん「近代社会」としての前提が瓦解していく日本を見ながら、メディアに携わる人間としてこのままではいけないと思い、ハーバービジネスオンラインを運営してきました。しかしながら、本日5月7日をもちまして、すべての記事の配信を停止し、一部連載は日刊スパ・女子スパ・bizSPAフレッシュの3媒体で継続するということになりました>

 長引くメディア不況のなか、多くの媒体が経費削減を求められ、厳しい運営を強いられている。経営陣も以前より厳しく媒体の収支をジャッジするようになった。

 HBOの場合も、収支の改善が進まなかったことが停止の大きな理由のひとつだという。

「もともと、HBOは広告収入に頼らないウェブメディアを目指すというコンセプトで立ち上げました。PV連動による広告収入ではなく、連載記事などを書籍化させることでマネタイズしようと試みたんです。実際にそこそこ部数が出た書籍もありましたが、結局、7年続けても赤字は改善されませんでした」

 HBOの記事から誕生した書籍といえば、ジャーナリスト・菅野完氏のデビュー作「日本会議の研究」(扶桑社新書)の大ヒットは記憶に新しいところ。2016年4月に出版された同書は18万部以上を売り上げ、「日本会議」という組織の実態を世に知らしめる契機となった。

次のページ
保守系の政治家や文化人からもクレーム