※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
子宮の形態異常 (週刊朝日2021年4月2日号より)
子宮の形態異常 (週刊朝日2021年4月2日号より)
不育症データ (週刊朝日2021年4月2日号より)
不育症データ (週刊朝日2021年4月2日号より)

 流産や死産を繰り返す「不育症」の患者は、日本に約3万1千人いるとされる。原因がわからないことも多いが、適切な治療や心のケアで出産にたどり着けることも少なくない。専門医は「あきらめずに受診を」と呼びかけている。

【イラストで見る】不育症で見られる「子宮の形態異常」

*    *  *
 不育症の原因はさまざまだが、投薬や手術といった治療で次回の流産や死産のリスクを減らせる場合がある。

 その一つが、不育症の原因の約1割を占める「抗リン脂質抗体症候群」だ。抗リン脂質抗体症候群の人は血液がかたまりやすく、血栓(血のかたまり)ができると、胎児に酸素や栄養が届かなくなって流産や死産を引き起こす。そのため妊娠期間中、薬を継続的に使って血栓を防ぐ「抗血栓療法」が有効とされている。

■ 妊娠中の自己注射で7割以上が無事出産

 抗血栓療法では、低用量のアスピリンとヘパリンを併用する。どちらも血液をサラサラにする作用がある薬で、催奇形性(胎児に奇形が起こる危険性)がないので、妊娠中も安心して使用できる。杉ウイメンズクリニック院長の杉俊隆医師はこう説明する。

「抗リン脂質抗体症候群では、特に血液の流れが遅い胎盤の血管に血栓が生じやすくなります。ヘパリンは胎盤周辺の血液凝固を防いで血栓をできにくくするだけでなく、胎盤の血管新生を促し、血流を改善させる作用があることがわかっています。海外でおこなわれた研究では、低用量アスピリンだけを投与したときの治療成績(無事出産できた確率)は50%以下だったのに対し、併用療法をおこなった場合には70~80%だったと報告されています。当院でも同等の成績が出ています」

 アスピリンは飲み薬なので使いやすいが、ヘパリンは注射薬のみ。しかも12時間おきに注射する必要がある。かつて患者は妊娠期間中、毎日2回、注射を打つために医療機関を受診しなければならなかったが、1999年に「在宅自己注射」ができるようになった。糖尿病の人がインスリン注射を打つのとほぼ同じ要領で、おなかやふとももに自分で注射する。

次のページ