そのため不育症の患者が妊娠した際には、出産までの精神的なサポートが欠かせない。近年は、医療者がカウンセリングなどを通して患者の不安をやわらげる「TLC(テンダー・ラビング・ケア)」を導入する医療機関が増えている。

 TLCでおこなう内容に明確な決まりはないが、日本医科大学病院の場合は、妊娠後できるだけ早い時期から少なくとも週に一度、不育症の専門家によるカウンセリングを実施している。竹下医師は言う。

「通常は妊娠と診断されれば次の妊婦健診は早くても2週間先になり、間が空いてしまいます。流産しやすい不安な時期にTLCで毎週医師や看護師に会うだけでも患者さんは安心できる。必要に応じて超音波検査をして胎児が成長していることを確認できれば、さらなる安心につながります」

 TLCによって赤ちゃんが産める確率が高まったという科学的データも出ているという。

「現段階では、不育症を確実に治す治療はありません。しかし流産や死産のリスクを減らす可能性がある治療を受けられるようになり、新たな治療法の研究も進められています。あきらめないことが大切です」(同)

谷わこ)

<取材した医師>
杉ウイメンズクリニック院長 杉 俊隆医師
日本医科大学病院産婦人科教授 竹下俊行医師

週刊朝日  2021年4月2日号