お笑いの世界では「ボケは成長しない。ツッコミは成長する」という定説がある。ボケ役が面白いことを考える能力というのは、生まれ持ったセンスによるところが大きいため、飛躍的に向上させることが難しい。一方、ツッコミ役は目の前のことに反応する技術が求められるので、努力次第で能力を高めることができるというのだ。

 その定説を踏まえて、長年くすぶっていたかまいたちが大化けしたのはツッコミの濱家の変化によるものだと言われているのだ。

 ただ、濱家が先輩芸人からいじられるキャラになったと言っても、そこまでいじられるイメージだけが強いわけでもない。また、若くて見た目がいい男性芸人にファンがつくことはあっても、アラフォーの既婚男性である濱家が、単にやせただけでここまで一気に人気を爆発させるというのもやや説得力に欠ける。

 では、かまいたちを飛躍的に成長させた濱家の本質的な変化とは何か。それは「ヤンキー」から「元ヤン」への変化である、というのが私の仮説である。

 誤解のないように先に言っておくと、濱家がもともとヤンキー(不良)だったと言いたいわけではない。本人もそれは否定している。しかし、学生時代の濱家は茶髪、細眉、ピアスのいかつい風貌で、喧嘩をしたり学校で教師ともめたりすることも多かったという。ヤンキーではないと本人は語っているが、限りなくそれに近いヤンチャな存在だったのは間違いないようだ。

 また、芸人になってからも、大阪時代は「芸人の風紀委員」「楽屋番長」として後輩芸人に厳しい態度で接しており、恐れられる存在だったという。

 ただ、東京に出てきてからの濱家は、そのような「ヤンキー性」を封印して、むしろその段階を卒業した「元ヤン」的なオーラを漂わせるようになった。そのことによって好感度がじわじわと上がっていったのだ。

 そもそも、先輩芸人にいじられてそれを素直に受け入れることができたのは、彼が上下関係を重んじるヤンキー気質だったからだ。また、濱家の見た目がこぎれいになったのも、ヤンキーから元ヤンに脱皮するために必要な過程だったと言える。

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「元ヤン」キャラは芸能界では人気が出やすい