3月6日には、東日本大震災からの復興をテーマにした主演作「宮城発地域ドラマ ペペロンチーノ」(NHKBSプレミアム)もも放送された。
同じSMAPでも、木村拓哉が非凡なヒーロー性を体現するのが得意なのに対し、こちらは凡人的苦悩や葛藤を表現するのがうまい。幕府を救うことを期待されながら、英雄にはなりきれなかった慶喜はむしろ、草なぎに合う役どころだろう。
SMAPつながりでいえば、草なぎは国民的グループの解散という、歴史的終焉の当事者でもある。その自らの経験と世間からのイメージも生きるのではないか。また、ビンテージジーンズをこよなく愛するオタクっぽさは、隠居後カメラなどに興味を持ち、趣味人として生きた慶喜と重なるもの。「青天」においても、前半と後半とでは違った顔を見せてくれるに違いない。
さらに、彼を含めた「新しい地図」の3人には熱いファンがついている。「青天」についても、SNSを中心に強い発信が行われていて、ドラマの好スタートを後押ししている印象だ。
ちなみに、来年の大河は三谷幸喜脚本の「鎌倉殿の13人」で、再来年は松本潤が主演の「どうする家康」。ともに注目度が高いなか「青天」には近現代モノは当たらないというジンクスもささやかれている。
そんな逆風をはね返し、現在の好調を大ヒットにつなげられるか。吉沢にとって、草なぎほど頼もしいバディはいない。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など