徳川慶喜を演じる草なぎ剛(C)朝日新聞社
徳川慶喜を演じる草なぎ剛(C)朝日新聞社

 NHK大河ドラマ「青天を衝け」。主人公の渋沢栄一を演じるのは、27歳の吉沢亮だ。第2回の途中で子役パートが終わり、本格的に登場すると、その若々しく新鮮な芝居が話題になった。

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 それとともに、徳川慶喜役の草なぎ剛に対し、その存在感を評価する声もあがった。じつは今回の大河が成功するかどうかのカギは、彼が握っているといっても過言ではない。制作側も「栄一と慶喜、二人の物語」(「カウントダウン大河『青天を衝け』NHK総合」)という位置づけをしているほどだ。

 渋沢を大河の主人公に据えるのは、斬新な試みとはいえ、戦国の三英傑や幕末の西郷隆盛・坂本龍馬のような大スターではない。広く知られた面白いエピソードにも乏しく、当時の政局や戦争にもほとんど絡んでこないのだ。特に前半は、歴史的に無名に近いから、こちらについては青春ドラマのような描き方になる。

 そのぶん、大河ならではのスケールの大きな要素をどうやって補うか、という話になったとき、慶喜という存在が自然と浮上したのだろう。制作統括担当者もこんな話をしている。

「全然そんな知られてないんですけど、慶喜と栄一というのはすごく密接に関わっていて、時代が変わっても変わらない友情といいましょうか(栄一が)慕い続けたっていうエピソードはあるんで、そこを面白く描くためにも(慶喜の)生い立ちから丁寧に描いております」(「50ボイス『青天を衝け』」NHK総合)

 なんといっても慶喜は、大政奉還によって江戸幕府を終わらせた「最後の将軍」であり、幕末という時代の中心人物のひとりだ。そのつながりで、西郷・龍馬のようなほかのスターも出せる。そんな慶喜に接点があったということで、渋沢も要所に絡めていくことができるし、そうやって、前半を乗り切る算段だろう。また、後半は後半で、大実業家となった渋沢と隠居した慶喜の交流を対照的に描くことができる。

 つまり「青天」は渋沢と慶喜というふたりの「バディもの」としての構造を持ち、そこが作品を成功へと導く可能性を高めてもいる。現代最強の刑事ドラマが「相棒」(テレビ朝日系)であるように、大河においてもバディもの的な構造は効果的だからだ。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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高視聴率の「篤姫」にもバディの存在