周知の通り「おちょやん」は実在の女優・浪花千栄子の人生をモチーフにしている。多くの芸能人が、劇中でも芸能人を演じるわけだ。その場合、その芸能人の芸風や生きざまなども、役の成否を左右するのである。

 その点、注目したい人がもうひとり。ヒロインが参加する鶴亀家庭劇の看板役者・須賀廼家千之助を演じる星田英利だ。同じ芸人である兄・須賀廼家万太郎とうまくいかず、一匹狼的な生き方しかできないが、アドリブや変装も自在にこなすなど、笑いには自信を持つ、クセの強い役をやっている。

 それを演じる星田自身はどうかというと、こちらもクセの強さでは負けていない。宮川大輔とのコンビ「チュパチャップス」でプチブレークしたものの、コンビ別れしてピン芸人「ほっしゃん。」として再始動。2005年にはR‐1グランプリで優勝したが、その後も政治絡みのツイートで炎上したり、16年にはインスタグラムで引退宣言をしてその日の夜に撤回したりと、お騒がせが続いている。

 引退宣言については、

「性格的に友だちもあんまりいなくて、なんでも一人で決めるタイプで、奥さんにも相談していなかった」(「バイキング」フジテレビ系)

 と、迷走の結果だったことを認めた。

 朝ドラでは「カーネーション」(11年度後期)で尾野真千子扮するヒロインと腐れ縁的につながる商売人を好演。ヒロインが妻子ある職人(綾野剛)と不倫関係になったときは、それを暴露して妨害した。

 が、現実では星田と尾野との不倫疑惑が勃発。二度、密会を報じられ、妻と離婚。ただその後、同じ女性と再婚した。

 そんな星田だが「おちょやん」での役はなかなかハードルが高い。ドラマのなかで喜劇をやり、圧倒的な格の違いを示さなくてはならないからだ。

 そのあたり、彼は見事にこなしている。第10週では、蛇に扮したアドリブでボケを連発。第11週では、老いた女中になりきって涙も誘った。それらをドヤ顔でやることにより、ヒロインやその相手役にとっての敵役として存在感を発揮するのだ。

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吉本と松竹の「面白さ」の違い