左からトータス松本、若村麻由美、星田英利(C)朝日新聞社
左からトータス松本、若村麻由美、星田英利(C)朝日新聞社

 NHKの連続テレビ小説「おちょやん」が折り返し点を過ぎた。前半の3カ月で強いインパクトを残したのが、ヒロインの父・テルヲを演じるトータス松本だ。

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 酒と女とバクチで身を持ち崩し、娘に迷惑ばかりかける姿に「朝ドラ史上最低の父親」という声も出たほど。2月16日放送の「うたコン おちょやんSP」(NHK総合)には歌手として登場したが、ヒロインの相手役を演じる成田凌にこう紹介されていた。

「今、国民が嫌ってるのはトータスさん、ではなくて、テルヲさんなのでね」

 とはいえ、ハマりすぎた役というのは怖い。同番組でのトータスいわく、実家にいる母親もショックを受け「こんな子じゃない、本当は」と「火消しに回っている」という。

 じつはこの人、なぜかテレビで悪目立ちする傾向があり、東日本大震災のときもちょっとたたかれた。ACのCM「日本の力を、信じてる。」で、シャツのボタンをふたつ外していたことが偉そうだと言われてしまったのだ。

 2002年に「ギンザの恋」(日本テレビ系)でドラマ初主演を果たした際も数字がとれず、全10回の予定が7回で打ち切りに。今回の怪演は名誉挽回にもなったとはいえ、イメージ的にはちょっとビミョーで、テレビ運のなさを引きずっているともいえる。

 一方、ヒロインに演技の手ほどきをする「先輩女優」山村千鳥を演じて前半を盛り上げたのが、若村麻由美だ。1987年度後期の朝ドラ「はっさい先生」の主役で世に出たという意味でも、杉咲花の「先輩」にあたる。

 ただ、この人については、03年に起きたスキャンダルを思い出す人も多いだろう。宗教団体「釈尊会」の代表・小野兼弘と結婚。小野はスキンヘッドの巨漢で、渡辺謙の妻(当時)に巨額の金を貸すなどして何かと注目されていた。しかし、4年後に病死したため、若村は本格的な女優活動を再開、現在にいたっている。

 ちなみに、今回の役は、私生活の不幸にもめげず、高いスキルと激しい気性で生き抜く孤高の女優。過去のスキャンダルがそこに説得力をもたらし、その芝居には迫力が感じられた。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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私生活もクセが強い星田