名選手が名監督になるのは難しい。現役時代に大きな栄光を経験したため、自分自身のやり方こそが1番と考えてしまう。就任1年目の春季キャンプから、選手たちは『金本イズム』を求められた。全選手にウエイトトレーニングや走り込みを徹底させた。また試合後の監督談話では名指しで選手批判することもあった。レジェンド監督への不満は、チームの低迷とともに日に日に大きくなって行く。

「すべてが悪循環の3年間だった。時代遅れの方法に感じられたが、選手、周囲とも1年目は我慢した。2年目に2位という結果が出て、早々と契約を延長したのも結果論だが早急過ぎた。優勝を狙う、と公言した3年目はまさにどん底で、周囲も堪忍袋の尾が切れた。監督本人への批判も殺到、相当のストレスが溜まっていた。シーズン中もどことなく元気がなかった」(阪神担当記者)

 3年目はシーズン序盤から選手との溝ができ始め、求心力はさらに降下。連日、ファンからの批判にも晒され、負ける度に強烈なヤジを飛ばされた。9月末の名古屋では宿舎前でファンからヤジを飛ばされ激怒、一触即発の状況になった。しかも一部始終の動画がSNSにアップされてしまい、監督という管理者としての資質まで問われる事態にもなった。球団内外の360度が敵だらけになってしまい、心も折れてしまったようだ。

「阪神は独特で、『外様』に対しての風当たりが強いのは昔と変わらない。球団内、ファンなど関わる人すべてにそういう部分がある。現役時代、優勝の立役者となった金本も同じ。現役選手ならば結果を出せば、周囲を黙らせることができる。だが監督はそうも行かず、すべての負けの責任を問われる。『外様』監督なら尚更、強い批判が出る。仮に『生え抜き』監督だったならば、任期途中での退任にならなかった可能性もあったかもしれない」(阪神OB)

 現役時代の03年、阪神移籍初年度に18年ぶりのリーグ優勝に貢献した金本も、『外様』という括りでは同様の扱いを受けていた。監督退任後の今でも「暗黒時代を作り上げた」とネット上などを中心に批判されることも多い。確かに在任期間中の阪神は頂点に立つことはできなかった。根性論など、時代遅れと感じる部分も目立ち、批判されやすい要素満載だった。しかし金本が起用して鍛え上げた選手たちが、現在の中心になりつつあることも忘れてはいけない。

次のページ
かつての教え子たちは順調に成長