DeNAからFA宣言した梶谷隆幸、井納翔一の2選手を獲得し、「巨大戦力化」に批判が集まる原巨人。今季、セ・リーグをぶっちぎりの強さで制しながら、なぜさらなる補強が必要なのか。巨人OBで長年スコアラーやチーム編成に携わった三井康浩氏に、巨人が補強にこだわる理由を聞いた。

【写真】近年の巨人の補強で最も“アテが外れた”のは、この選手

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 三井氏は1978年に巨人に入団、江川卓氏は同期である。腎臓の病気で引退後、スコアラーを22年務めた。

 ちなみにプロ野球のスコアラーとは、スコアブックを付けるだけの仕事ではない。相手チームの選手をあらゆる角度から観察し、癖や弱点を見抜いて「丸裸」にする仕事である。作成したデータはチームの戦術に生かされ、時には監督や選手から意見を求められることもある、まさに「プロの裏方」と言える存在だ。

 2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、チーフスコアラーとして帯同し連覇を支えた。その後、フロントに転じ、17年には編成本部参与としてチーム編成に携わった。

 来季の巨人は絶対的エースの菅野智之が抜ける可能性があり、リスクは抱えるが、それでも戦力は厚い。なぜ批判を受けてまで補強に走るのか。三井氏は、こう解説する。

「まず、巨人には『常勝巨人軍』という宿命があり、現場は大きな重圧を背負っています。毎年、必ず優勝しなければならないというプレッシャーの中で、少しでも前年より戦力を上げていかなければなりません。若手の育成も重要ですが、あくまで『常勝』を求める中で、という現実があります」

 だが、大金を積んで他球団の有力選手を獲得する姿勢には、ずっと批判がつきまとってきた。

「ファンの方から批判があるのは承知していますし、私が編成にいた時に、球団OBから『獲りすぎじゃないのか』と叱られたこともあります。それでも、戦力アップのために補強を続けるのは巨人軍の宿命です。現場から『欲しい』と要望があれば、フロントは応えないといけません。今回も、エース菅野が抜ける可能性がある状況で、原監督の意向を受けフロントが動いたのだと思います」

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そもそも獲得する必要があったのか