というのも、全日本プロレス時代の12月は世界最強タッグ決定リーグ戦を戦っているし、年始は1月2日から試合があって、WARのときは1月4日の新日本プロレスの東京ドーム大会に参戦していたから、年末年始はからだ作りを優先させなきゃいけない。新日本プロレスの東京ドーム大会が終わって、そのファイトマネーがバーンと振り込まれてようやく、年が明けたことを実感するんだ(笑)。お父ちゃんが出稼ぎで稼いで帰ってきた気分だね。

 現役を引退してからは、嶋田家の大みそか定番のうどんすきをみんなで食べて、俺は年が明ける前に寝ちゃう。午前3時くらいに一度起きて「あけましておめでとう」と言ったら、また朝まで寝る(笑)。元日は午前中に起きて、新しい箸袋に家族の名前を書くのが俺の役割。これも女房が決めたことだ。そうしたらおとそを飲んで、家族の健康を祈って、俺から家族に一言あって、というのがいつもの正月だね。

 嶋田家のお雑煮は女房の両親が九州出身なので、十数種類の具が入った筑前煮のような汁に濃い目の醤油味。本来はスルメを入れるんだけど、俺が「生臭くて嫌だ」って言ったもんだから入らなくなった(苦笑)。不思議なことに歳重ねると、昔はあまり好きじゃなかったお雑煮が好きになってくるんだよ。あとは、鍋の締めの。この餅はポン酢で食べるのがいいね。

 今は普段通りの正月を迎えられると安堵するよ。1月2日から試合することもないから、まったりしている。これが何年かしたら、やることがなくなって変に焦るかもしれないけど、それまではゆっくり過ごすことにするよ。

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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天龍源一郎

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天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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