相手のことを思い、良かれと思って言ったのに聞き入れてもらえず、逆に相手の心が離れていってしまった……。そんな失敗をしたことはありませんか? 『人気NO.1予備校講師が実践!「また会いたい」と思われる話し方』(朝日新聞出版)の著者の犬塚壮志氏は、そのような苦い経験を糧にし、話し方を変えることで、人気No.1講師へと変貌を遂げたと言います。その話し方のコツを、同書から一部を抜粋、再編集して紹介します。

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■なぜ「愛のないダメ出し」になってしまうのか?

「ダメだね」「それは違う」「見通しが甘いよ」

 聞き手がどういう意図で発言したのかを汲み取らず、それを探ろうとする質問も発しないまま、相手の言ったことに対して「それはダメだ」「ここがおかしい」と否定。もし、聞き手が勇気を出して「じつはこういう理由で」「今まだ準備段階で」と真意を語ろうとしようものなら、「それは言い訳だ」「詭弁だ」と蓋をしてしまう……。

 そのような相手の未来を考えず、今後の可能性も潰してしまうようなコミュニケーションの取り方は絶対に避けるべきです。

 しかし、こうした対応は、塾・予備校業界でも「あるある」です。たとえば、生徒が「A大学に進学したい。この勉強をしたいから」と言ったとき、講師が「今の偏差値では無理。現実を見なよ」と否定してしまうのです。

 講師には受験指導の経験があるとはいえ、その知見は生徒がどうしたら志望校に受かるかに向けて使われなければなりません。A大学の出題の傾向、今の生徒の学力との比較、残りの時間でやるべきこと。これが見えてくれば、態勢を立て直すことができます。

 ところが、自分のやり方が正しいという思いが強くなりすぎると、相手の発言を受け入れる意識が薄れていきます。「オレはもっと上をいっている」「より多くの経験を積んできた」といった自負からか、聞く耳を持たずに否定的な言葉が口から溢れ出します。

 話し手本人は、聞き手を思って本心からのフィードバックを行い、「愛のある苦言」を呈しているつもりです。しかし、聞き手やその周りにいる人からすると、「愛のないダメ出し」にしか思えません。

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「愛のないダメ出し」を「愛のある苦言」に変えるには?