では、どのような言い方をすれば、「愛のある苦言」として聞き入れてもらえるようになるのでしょうか?

■「愛のないダメ出し」を「愛のある苦言」に変えるには?

 大切なのは、事実の伝え方です。

 事実を伝えるときは、たとえ相手のためとはいえ、主観的な表現は避け、事実であることを明確にして話すのがコツです。

 一言で言うと、「話し手の主観に偏った伝え方を事実ベースで言い換える」ことが重要です。たとえば、次のように言い換えます。

<主観的な表現の言い換え例>
・「この問題は難しい」
 →「センター試験で9割正解を求める東大レベルを目指すなら解けなくちゃいけないけど、7割正解で受かる大学を受験するならできなくても問題ないよ」

・「一生懸命、模試をつくったよ」
 →「センター試験が開始された1990年からすべて解いて、傾向を分析。それをベースにして、今度の模試をつくった」

・「がんばれば、できるよ」
 →「1日30分、5ページずつ読み進めれば、資格試験対策は十分間に合うよ」

・「詳しい関係筋によると」
 →「現地に足を運んで現場担当者から直接仕入れた情報によると」

 特に形容詞の使い方に注意しましょう。形容詞や副詞を主体とした伝え方は、話し手の主観的な表現になってしまいがちです。だからこそ、客観性の高い事実ベースに言い換えます。

 たとえば、「難しい問題」を「センター試験で9割正解を求めるなら必要、7割なら不必要」と定義することで、解けるよう時間をかけて対策すべきかどうかがはっきりします。あるいは、「がんばれば」を「1日30分、5ページずつ」と定めることで、やるべきことが明確になります。

 事実ベースで言い換えることで、話の内容が具体的になるわけです。

 また、「一生懸命」を「センター試験が開始された1990年からすべて分析」「詳しい関係筋」を「現地に足を運んで現場担当者から」と説明すると、話し手がどれだけ聞き手のことを考え、時間と手間をかけて準備してくれたかが明らかになります。

 いずれにしても、事実ベースでの語りは、聞き手に対して、話し手の誠意を示す効果が生まれるのです。

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耳の痛い話をするときに欠かせないコツ