放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん

 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、ドラえもんのCG映画について。

【画像】違和感なし?のび太、ドラえもん、菅田将暉の異次元トリオ

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 これから書くことは映画への不満ではないです。「のび太」への不満です。

 映画『STAND BY ME ドラえもん 2』を見に行きました。前作、『STAND BY ME ドラえもん』は、2014年8月の公開なので6年がたちました。

 前作を見た時に、実は僕はのび太に対して、とてもいら立ってしまいました。

 というのも、この「STAND BY ME」はアニメで有名なドラえもんを、フルCGで描くというとんでもなく素晴らしい企画による作品だったわけですが、これを見た時に、いつもアニメで見て感じなかったことを感じるようになった。CGになり、リアリティーを持ってしまったことにより、のび太に対して勝手にいら立ちを感じるようになってしまったのです。

 例えば、テストで0点を取るというくだり。アニメで何百回と見ている設定ですが、テストで0点を取り、それでも、頑張ろうとせずに、ドラえもんに頼ろうとする様。それこそがドラえもんなんですが、CGというリアリティーを持つことにより、のび太に「もっと頑張れよ!!のび太」と思うようになってしまったのです。とはいえ、後半はその気持ちが消えていくほど楽しめて、泣きました。

 そして今回。予告編などで知っている方も多いかもですが、しずかちゃんと結婚することになったのび太が式の当日、逃げてしまうのです。ストーリー的には時間軸を使った伏線と回収により、おもしろいし、「なるほどな~」と思うところが何個もありました。が、ごめんなさい、のび太です。結婚式を逃げる理由とかも、そのあとの行動とかも、もう、のび太に対してのいら立ちが、前回よりも強くなっていきました。何で俺はこんなに勝手にのび太にいら立っているのだろうと見ながら考えてわかりました。それはしずかちゃんです。ドラえもんに出てくるしずかちゃんと言えば、子供のころから男子全員が「理想の女性」と思って育っていくわけです。もし、飲み会でしずかちゃんのこと本気でディスるやつとかいたら、許せません。それほどまでに、しずかちゃん=理想の女性という考えが僕の中で刷り込まれていたわけです。で、ですよ。そんなすてきなしずかちゃんが、のび太を好きになる理由が僕的には納得できないんです。放っておけないという理由もわかるし、のび太と結婚する理由まで含めて、もう、まさに女神なんですよ。なのに、なのにですよ、そんなしずかちゃんの気持ちに対して、のび太の野郎の行動と考え方が、僕からしたら許せないんですよ。ドラえもんという、全国の子供たちがみんなほしいと思うロボットを手に入れ、そして大人になり、しずかちゃんという超理想の女性と結婚できる。こんな理想の人生ってあります?いくらジャイアンとスネ夫にいじめられてたとしても、人生、トータルのプラスマイナスで考えたら、圧倒的にプラスなんですよ。なのにね、のび太、何してんだよ!!と思いながら見てしまう。ということは物語にハマりまくっている証拠なんですが、結果、今回は最後まで見て、「しずかちゃん、なんで、のび太なんだよ!!」と思ってしまう自分がいました。

 と、こんな見方までして熱くなってしまう「STAND  BY  MEドラえもん2」。皆さんが見てのび太に対して、どう感じるか?ぜひ見てほしい作品です。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。10/31スタートのテレビ朝日系ドラマ「先生を消す方程式。」の脚本を担当。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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