マシソンは「野球なのでお互いが熱くなることもある」と多くを語ろうとしなかったが、捕手の阿部慎之助は「打たれて負け犬の遠吠えみたいだった。あいつが悪い」とおとなげない態度に苦言を呈していた。

 それから4カ月後、バレンティンは、チームの同僚ともいざこざを起こす。

 8月19日の巨人戦、4対3とリードのヤクルトは、9回に抑えの切り札・バーネットを投入し、逃げ切りを図った。

 バーネットはロペスに安打を許したものの、2三振を奪い、勝利まであと1死。ところが、次打者・長野久義の左翼線に落ちた打球を、バレンティンがクッションボールの処理を誤り、土壇場で同点に追いつかれてしまう。

 気持ちを切らすことなく、坂本勇人を三振に打ち取ったバーネットだったが、ベンチに引き揚げると、バレンティンの拙守をなじり、激しい口論になった。

 直後、頭に血が上った状態で打席に立ったバレンティンは、2-1から2球続けて明らかなボール球に手を出し、最後は遊ゴロに倒れた。

 ヘルメットを叩きつけ、ベンチの奥に下がろうとしたバレンティンに、バーネットが「待ちやがれ!」とばかりに後ろから掴みかかり、第2ラウンドのゴング。これでは、とてもチームの和など保てず、ヤクルトは延長戦の末、4対6で敗れた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら