しかし、それらすべての努力は、2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標の前に、参戦からわずか6年目にして見直され、最終的に2021年をもって参戦を終了するという決定に至った。

 つまり、ホンダにとって今回のF1活動は、勝つという見通しがたつ前に戦いを始め、タイトル争いで敗れ続けていく中で撤退を決断したようなものだった。

 したがって、今回のホンダのF1活動を、もし古代中国における伝説的な軍略家である孫武が見ていたら、こう言うだろう。

「批判されるべきは、撤退したことではなく、むしろ参戦したことだ」と。(文・尾張正博)