「僕らもよく知らなかったですから、(高校時代の)村上っていう選手をね。それが(ドラフトで)清宮の外れでしたけど3球団競合して、それぐらいの(評価の)バッターなんだなってその時に思ったんですけど、入ってきて実際に見て『スゴいな』と……。度肝を抜かれたっていう感じでしたよ。こんな選手がいるんだって」

 山田や青木宣親、横浜(現DeNA)コーチ時代には内川聖一(現ソフトバンク)といった選手をタイトルホルダーに育て上げた名伯楽を唸らせたものは何だったのか? 

「やっぱり飛ばす力とスイングの速さですよね。あと、他人とちょっと違うところは(1年目から)おどおどしていないっていう。最初から10年選手みたいな風格がありましたよ。すごく前向きで、少しでも上手くなろうっていう気持ちがあるし、精神的にも強いんじゃないかなって。練習もよくしますしね」

 その「スゴい」ルーキーは1年目の9月に初めて1軍に上がると、初打席初ホームランの衝撃デビューを飾る。2年目の2019年は開幕から1軍で持ち前の長打力を発揮し、いずれもセ・リーグ3位の36本塁打、96打点で新人王に輝いた。

 ただし、打率.231は規定打席到達者中ワースト、184三振はセ・リーグ新記録。小川淳司監督(現GM)ら当時の首脳陣は、村上の持ち味を消してしまうことのないようにと「打率と三振は気にしなくていい」と言い続けていたというが、村上自身は「それでも僕は気にしますから」と忸怩たる思いを抱えていた。

 そんな村上に「ストレス解消法」について尋ねた時のこと。返ってきた答えは明快だった。

「特にないですね。もちろんストレスは溜まりますけど、僕には野球のストレスしかないので。野球でストレスが溜まったら、打って返すしかない。結果を残すことでしか、ストレスは解消できないですから」

 プロ3年目の今シーズンを迎えるにあたり、目標として掲げたのは「打率3割、30本塁打、100打点」。もちろん例年どおりシーズン143試合の日程で行われるという前提でのことだったが、その中で最もハードルが高いと思われた打率3割を、ここまで見事にキープしている。

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今季は“甘い球”が来ない中で…