その要因について、村上は「去年の143試合(出場)の経験がすごく今年に生かされてると思います。(相手バッテリーの)配球にしても、ピッチャーの球筋にしても、去年いろんなピッチャーを見させていただいたので、すべてにおいて経験かなと思います」と話しているが、それに加えて並々ならぬ努力があるのは間違いない。

 6番バッターとしてスタートした昨年と違い、今年は開幕から不動の4番。相手ピッチャーの攻めも格段に厳しくなり、勝負を避けられることも少なくない。打率は一貫して高い数字をキープしながらも、代名詞であるホームランはなかなか出なかった。

「(打線の)中軸を打つ宿命じゃないですけど、なかなか甘い球も来ませんし、そこでどうやって打つかが、技術的な部分の成長だと思うんで。去年みたいに甘い球が来なくて、なかなか自分のスタイルというものは発揮できてないんですけど、まだ成長段階なので、これからもっと結果を残せればなと思ってます」

 9月16日からの10試合で6本塁打とアーチを量産し始めたのは、そんな話をしていた頃のことだ。冒頭の藤浪からの一発で今季18号となり、トップを行く巨人岡本和真に5本差まで近づいた。

 それだけではない。9月29日終了時点で、打率.329はDeNA・佐野恵太の.350に次いでセ・リーグ2位。61打点はトップの岡本と10点差の4位タイ。打撃3部門ですべて5位以内に入っているのは、セ・リーグでは村上しかいない。

「今年(2019年)は実質1年目ですから、打率に関してはいいんじゃないですか。ただ、もともと広角に打てる選手なんで、打率ももっと上がってくると思うんですよ。もうちょっと広角に打てるようになればホームランももっと増えるだろうし、勝負強いから打点も多くなって、これで打率も上がってくれば三冠王も狙えるようになるかも分からないですね」

 昨シーズン、杉村コーチはそんな予言めいたことを口にしていたが、まさか1年も経たないうちに現実味を帯びてくるとは、思ってもいなかっただろう。

次のページ
低迷するチームで“希望の光”となっている村上