ヤクルト・村上宗隆 (c)朝日新聞社
ヤクルト・村上宗隆 (c)朝日新聞社

 公式戦では7年ぶりの救援マウンドに上がった阪神・藤浪晋太郎が投じた真ん中高め、152キロのストレート。ヤクルトの若き4番、村上宗隆のバットがこれをとらえると、すさまじい音とともに弾き出された打球はグングンと伸びてセンターのバックスクリーンを越えた。

【ファンが選んだ平成で最もカッコいいバッティングフォームはこの選手!】

 9月26日の阪神戦。この一発が決勝点となり、およそ2カ月ぶりに本拠地・神宮のお立ち台に上がった村上は、特大のホームランに水を向けられると「打てて良かったです」と、相好を崩した。

 火事とケンカが「江戸の花」なら、ホームランはいつの時代も「野球の花」の1つ。今シーズンは開幕から不動の4番バッターとして、しっかりと結果を残している村上だが、ホームランの数がなかなか増えないことに物足りなさを感じるファンも少なくなかったはずだ。

 その「物足りなさ」は、村上自身も感じていたようだ。先のヒーローインタビューの後で行われたオンライン会見で、彼は言った。

「前半戦はなかなかホームランが出なかったので、まだまだ足りないのでね。もっともっと打てるようにやっていきたいなと思ってます」

 子供の頃から「他人よりは飛ばせるかな、強く振れるかなっていう自信はありました」という村上は、本・九州学院高時代に通算52本塁打を記録。2017年秋のドラフトでは早実高・清宮幸太郎(現日本ハム)の外れ1位ながら、3球団競合の末にヤクルトに引き当てられ、プロの道に進んだ。

 1年目の2018年はファームでじっくりと育てられ、イースタン・リーグ3位の打率.288、清宮と並んで同2位の17本塁打、そして単独2位の70打点をマーク。ヤクルトが誇る「ミスター・トリプルスリー」の山田哲人でさえ、履正社高からドラフト1位で入団した2011年はイースタンで打率.259、5本塁打、39打点だったから、ファームとはいえ村上がいかに突出した成績を残していたかが分かる。

「(高卒で)入ってきていきなりファームで17本でしょ? そんな選手はいないですよね、今まで。筒香(嘉智、現MLBレイズ)とか、僕らは他球団(のコーチ時代)では見てますけど、ヤクルトではいないですね」

 村上のルーキーイヤーは巡回コーチという立場で、1、2軍を問わずバッターの指導に当たっていた杉村繁打撃コーチは、当時を振り返ってそんなふうに話したことがある。

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「度肝を抜かれたっていう感じでしたよ」