4つ目は「友だち重視」。法制局長官やNHK会長などの重要ポストにお友だちをつけ、加計学園監事の弁護士を最高裁判事にする。あげくに官邸に都合よく動いた黒川氏を、定年延長してまで検事総長に据えようとした。コロナ対策の持続化給付金のトンネル団体にしても、「アベノマスク」の委託先にしても、安倍政権の政策を突き詰めていくと必ず自分の親しい仲間や金が絡んでいます。「Go To トラベル」を強行したのも、全国旅行業協会の会長である二階俊博幹事長らに数千万円もの献金が渡されているから。「構造的な汚職」といってもいい。

 最後の5つ目は「異論つぶし」。安倍首相はこれまで自分と違う意見の人を徹底的に潰してきました。その最たる例が先に述べた「溝手つぶし」です。総裁選で言えば、出馬を表明している石破茂氏が、森友学園をめぐる文書改ざん問題で自殺した財務省職員の手記が新たに出てきたことに対し、「調査が必要か白紙で検討したい」と述べてしまった。再調査を否定してきた安倍首相にしてみれば、石破氏が総裁になっては都合が悪いのです。だから自民党は、地方票に強い石破氏には不利な党員・党友による投票を省略した形式での投票に固執している。

 なぜここまで長期政権を築けたのか。それは、これら5つの統治手法を支える「前提崩し」が成功してきたからです。国の最高法規で、ルールの中のルールである憲法を蔑視し、「集団的自衛権行使は違憲」という政府の憲法解釈を閣議決定で強引に変更する。党運営の基本である党則の80条4項(総裁は連続2期まで)を、安倍首相は自分のために「3期まで」に変更した。国民からの支持率が高かった小泉純一郎首相(当時)でさえ、「人気があっても任期で辞める」という大原則をしっかり守ったというのにです。

――その安倍政権を支えた菅義偉官房長官が、総裁選への出馬を表明しています。

 菅氏は安倍政権の中心にいた人物です。先に述べた5つの統治手法を実務面で支えてきた立場です。加計学園問題で「総理のご意向」文書の存在を認めた前川喜平氏に対して、菅官房長官は個人攻撃を仕掛けた。東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者が質問しても答えない。安倍政権以前の官房長記者会見ではありえないような「木で鼻をくくったような」説明しかしない。そんな人物が、総理大臣になるかもしれないのです。メディア対策も自ら徹底的に行い、「情報隠し」と「異論つぶし」は陰湿で粘着質なものになるでしょう。

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総裁選の行方は