「吉川尚輝がいまだ二塁のレギュラーに定着できない。しかし吉川とともに併用される生え抜き若手が可能性を感じさせている。全体的な底上げがされており、山田獲得に動かない可能性も出てきたのではないか」

 増田大輝、北村拓己、若林晃弘など、イキの良い内野手が多い。また球団自体が従来の『金権野球』イメージからの脱却を目指していることも大きい。

 巨人以外ではソフトバンク楽天も候補に挙がっていた。

「ソフトバンクは外国人選手には投資して他球団からも獲得する。しかし日本人に関しては自前で育て、長期契約するケースが多い。加えて二塁には牧原大成、三森大貴、周東佑京など伸びしろのある選手が揃っている。また楽天も二塁にはFAで獲得した浅村栄斗がいる。山田の今年を考えてリスクを冒すことは考えにくい」(在京スポーツ紙記者)

 ソフトバンクは生え抜きの日本人野手との長期契約がチーム方針。松田宣浩(15年オフ4年)、中村晃(18年オフ4年)、柳田悠岐(19年オフ7年)の例がわかりやすい。

 また楽天は石井一久GM体制となり、適材適所での補強を重視している。山田というピースが必要な場所が現在はない。浅村をはじめ他選手のポジションを動かしてまで、山田獲得に動くとは考えにくい。

 他球団の動きが活発化しなければマネーゲームにはならない。そうなってくればヤクルト残留の可能性も出てくる。

「巨人ファンだった、と公言していたのは子供時代の話。今はヤクルトの顔として日本中に知れ渡っている。他球団移籍した場合、これまでのような好待遇は無理だと本人も認識している。お金や待遇などでヤクルトが誠意ある態度で交渉すれば、残留可能性も少なくない」(ヤクルト担当記者)

「神宮球場が好きなんですよ。青山という、東京の中でも最もオシャレな一等地にある。現在は屋外の古いものでノンビリした球場だが、数年後には最新式の新球場に生まれ変わる。その過程の中で中心選手でいるのも悪くない、と思っている。程よい大きさ(=狭さ)で、自身の打撃成績にプラスになっていることもわかっている。残留の決め手は、神宮かもしれない」(球団関係者)

 開幕延期のため11月まで行われる今シーズン。現在不調の山田だが、今後の出来次第では球界が大きく揺れる。調子を戻し活躍すれば、他球団は獲得に積極的に動くことも考えられる。

「打って欲しいが、打って欲しくないような……」

 ヤクルト関係者は複雑な思いを抱えているはずだ。主軸としてチームの勝利に貢献して欲しいが、復調すれば流出の危険性も高まってしまう。山田本人以上にヤキモキして眠れない夜が続きそうだ。