「タイトルを獲得するような好打者の場合、夏場から必ず成績を上げてくる。その流れのまま終盤戦、そして日本シリーズなどへ好調を維持する。坂本の場合もこれまではそうだったから今年も心配はいらないはず」

 宇野氏もかつて、84年8月に15本塁打の固め打ちをした『夏男』として有名だったのだ。実際、坂本もここにきて調子を上げてきており、9月1日時点で8試合連続でヒット中で、打率も.257まで上昇してきた。

「僕も夏は好きだったけど、坂本とは実績が違うよ。(宇野氏は)タイトルも1回だけだし日本一の経験がないんだから」

 坂本は日本一2回(09、12)に加え、首位打者、最高出塁率(共に16)、最多安打(12)のタイトルを獲得。ベストナインには5回の選出を誇る。

 また通算1884安打で迎えた今年、あと116本で史上53人目の2000本安打達成を目前に控えていた。7月29日までに達成できれば史上最年少となる話題もあった。これまでの実績を考えれば十分に可能な数字だったが、コロナ禍で開幕が遅れたことで達成は絶望的となってしまった。

「多少のショックはあると思う。選手の価値は記録と記憶だが、最後まで残るのは記録。2000本安打は打者にとっては大きな勲章だが、それも最年少での達成だったのだからね。僕なんて到底届かなかった数字だよ(宇野氏はプロ通算1620安打)。しかし最年少記録がダメでもこれだけ早く打つのは驚異的なことだし、巨人でやったことで価値はさらに上がる。気持ちの切り替えができていると思うし、影響はないと思う」

 そして若いと思われていた坂本だが、今年で32歳を迎える。年齢的な部分は誰もが通らなくてはならない問題。宇野氏は自らの経験を交えながらアドバイスも送ってくれた。

「腰の持病もあるし体力的な部分とうまく接することがより大事になる、全体的に反応が鈍くなったり、疲労が抜けにくいなどの部分も出てくる。これは技術力と身体のケアでカバーするしかない。医学などの進歩はすごいから、良いものはどんどん取り入れて欲しい。その辺の準備はしっかりやっているはず」

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これから長くプレーするための「課題」は?