手術が有効な合併症もある。「近視性牽引黄斑症」は、眼球の中にあるべとべとした硝子体という液体の変化によって網膜が内側に引っ張られることで起こる症状の総称だ。網膜がはがれる「網膜剥離」やその前段階で網膜の層が分かれる「網膜分離」、悪化して網膜に孔が開いた「黄斑円孔」などを指す。

「牽引黄斑症は、網膜硝子体手術によって網膜を引っ張っている硝子体の膜を除去して牽引を解除すると、分離や剥離が治り、黄斑円孔に進行するのを防げる可能性があります」(平形医師)

 ただし後部ぶどう腫の変形が強かったり網膜や脈絡膜の萎縮が進んでいたりすると治りにくい。

 網膜硝子体手術とは、眼球を3カ所切開して器具を入れ、硝子体を取り除く手術のことだ。硝子体があった場所にガスを入れ、その浮力ではがれた網膜を眼球に押し付ける。網膜がくっつくまで、数日から10日程度うつぶせのまま過ごさなければならない。

 症状は、変視症のほか、中心が欠けて見える視野欠損がある。目の前に小さなゴミのようなものが飛んで見える「飛蚊症」の悪化がみられることもある。

 もう一つの合併症である「近視性視神経症」は、緑内障と似ているが、強度近視の場合、眼球の変形によって視神経が萎縮し、視野が欠ける。眼球の変形が背景にあるため、緑内障よりも治療が難しい。眼圧が高ければ緑内障と同様に眼圧を下げる治療を実施する。眼圧を下げることが進行を遅らせると考えられている。

「40代以降は緑内障も頻度が増加します。老眼も始まるので、症状があるときだけではなく、目の検診を受けることをおすすめします。眼底検査や網膜の断層を調べるOCT(光干渉断層計)検査で後部ぶどう腫が見つかったら、定期的に経過をみたほうがいいでしょう」(同)

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