現在実施されている手術は、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の3種類で、開腹手術がもっとも多い。ダヴィンチによるロボット手術は、前立腺がん全摘術、腎がん部分切除に続いて、18年に膀胱がん全摘除術にも保険適用となった。

 開腹手術の手術時間は8~10時間、入院期間は約3週間、出血量も1千シーシー以上で傷も大きく、患者の負担の大きい手術だ。腹腔鏡手術はより負担の小さい手術で、膀胱切除・摘出までを腹腔鏡下で、尿路変向術は開腹しておこなう。

 ロボット手術は腹腔鏡手術と同じように、おなかに直径8~30ミリ程度の孔を6カ所開けて鉗子を挿入する。尿路変向術も開腹することなくおこなえる。

 東海大学医学部泌尿器科学領域主任教授の宮嶋哲医師は次のように話す。

「腹腔鏡の鉗子には関節がなく、尿路変向の細かい手技は不可能でしたが、ロボット手術では鉗子の先が自由に曲がるので、尿路変向術までの全工程、腹腔内での手術が可能になりました」

 そのため、出血量は100シーシー程度と格段に少なく、手術時間は5~6時間に短縮された。入院期間は約2週間だ。ロボット手術の合併症として、腸閉塞や感染症、深部静脈血栓症などがあるが、頻度は高くない。また、手術中は頭部を30度下げる形になるため、緑内障のある人は症状が悪化する可能性がある。

 ロボット手術は保険適用からまだ日が浅いため、実施している病院はそれほど多くない。しかし今後は普及が進むだろう。

「血尿は継続しないことが多いので、つい放置しがちですが、油断せず、泌尿器科を受診してください。早期発見であれば、膀胱全摘を回避できる可能性が高くなります」(宮嶋医師)

 なお、膀胱がんの手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。

手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・別所文)

≪取材協力≫
藤田医科大学病院 副院長・腎泌尿器外科 主任教授 白木良一医師
東海大学医学部 泌尿器科学領域主任教授 宮嶋 哲医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より