5.うがつ/穿つ
~「穿った見方」は「ひねくれた見方」?

 「穿った見方」といった場合、意味は「ひねくれた見方」と思われがちですが、正しくは「本質をとらえた見方」です。「穿つ」は、「穴を開ける」や「穴を掘る」という意味で、転じて「物事を深く掘り下げる、本質を的確にとらえる」意味にもなりました。ただし、「穿ちすぎ」といった場合は、「物事の本質をとらえているようで、実は行き過ぎていて事実から外れている」という意味になります。

6.さた/沙汰
~砂の中から砂金を選り分ける

 「地獄の沙汰も金次第」という言葉があります。「地獄の裁判も金の力で有利になる」という意味で、世の中は金の力で左右されるという例えです。この場合の「沙汰」は、「裁判」という意味です。もともと、「沙」は砂のことで、「汰」は「選び分ける」という意味があります。合わせて砂の中から砂金を選より分けることで、転じて「善悪を判断すること」すなわち「裁判」の意味になりました。さらに、「追って沙汰する」というときの「通知」や「命令」、「音沙汰」などの「便り」や「知らせ」、「警察沙汰」などの「行い」や「しわざ」などへと意味が広がりました。

7.うなだれる/項垂れる
~「うなじ」を「垂れる」姿をそのまま表す

 「項」は「うなじ」のことです。つまり、「項垂れる」とは「項」を「垂れる」ことを表します。気持ちが沈んでうつむいている姿をそのまま表した言葉なのです。また、首を下に動かすことを「項突く」といい、肯定や了承、同意の意を示して首を縦に振ることを「うなずく(頷く)」というようになりました。

※漢字エンタメ誌「みんなの漢字」2020年3月号から抜粋
監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)