項垂れてため息ついていると幸運は逃げてしまう(イラスト/桔川伸)
項垂れてため息ついていると幸運は逃げてしまう(イラスト/桔川伸)

 ふだんひらがなで用いることが多い言葉の中には、漢字表記を知ると意味をとらえやすくなるものがあります。また、難しい漢字の言葉も、漢字の意味を知ると納得できることがあります。そんな漢字にまつわるうんちくを7つ紹介しましょう。

*  *  *

1.なしくずし/済し崩し
~「うやむやに」のような悪い意味はない

 「済し崩しに進める」というと、「うやむやのうちに進める」のような悪い意味でとらえられがちです。しかし、「済し」は返済の「済」でもあるように、「借りたものを返す」という意味があり、「済し崩し」は「借金を少しずつ返済すること」を意味します。そこから「物事を少しずつ済ましてゆくこと」へと意味が広がりました。したがって、本来は悪い意味ではないのです。

2.しがらみ/柵
~水流をせき止めるための竹や柴がからみついた「さく」

 漢字からわかるように、「しがらみ」とはもともと柵(さく)のことです。柵といっても、水流をせき止めるための柵のことで、等間隔に打ち並べた杭に竹や柴(しば)などをからみつけてつくられます。そのからみつく様子から、人の身を束縛するものの例えとして「柵」の字が用いられるようになりました。

3.ことばのあや/言葉の綾
~不用意な発言の釈明には使わない

 「綾」とは、「綾織」という布の織り方のことです。綾織はとても複雑な織り方で、高い技術が必要とされます。そこから、比喩を使うなどの技術を駆使した「言葉巧みな言い方」を「言葉の綾」というようになりました。巧みな言い方によって意図が正しく伝わらず誤解が生じたときに、釈明のために用いられます。本来は、不用意な発言の釈明で用いる言葉ではないのです。

4.いやがうえにも/弥が上にも
~「否が応でも」とはまったく意味が異なる

 「嫌であろうがなかろうが」「何が何でも」という意味の「否が応でも」と混同されがちな言葉です。そのため、「弥」を「嫌」や「否」と勘違いするケースもみられます。「弥」は「いよいよ」「ますます」という意味で、「弥が上にも」は「なお、その上にますます」「なお、いっそう」などの意味になります。例えば、これまでの期待がいっそう高まってゆく場合は、「弥が上にも期待が高まる」といいます。

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「うがった見方」の「うがつ」って?