■次々に新薬登場で 治療効果が上がる

 治療方針は、骨髄検査で染色体や遺伝子、血液細胞の表面に現れる抗原などを解析して、年齢や患者の状態も加味して決められる。

「急性骨髄性白血病の場合は、寛解導入療法で抗がん剤2剤を1週間投薬して残り3週間の休薬で1コースという治療をおこないます。大量の抗がん剤により、できるだけ悪い細胞を消して良い細胞の回復を促す治療です。顕微鏡で血液を見ても悪い細胞がない状態に持ち込みます。ただし、悪い細胞はそれでも潜んでいますので、さらに念のための治療である地固め療法をおこないます」(大橋医師)

 この治療で寛解へ入るのは約8割だが、寛解が長期間維持されるのはそのうちの2割程度で、残りの6割は再発する。そして造血幹細胞移植により根治へ導けるのはそのなかの約5割程度のため、5年生存率全体は5~6割だ。

「悪い細胞のタイプは染色体の異常によって予後不良、中間、良好に分けられ、さらに遺伝子を70種類ぐらいに分類し、精査して治療方針を決めています」(同)

 かなり予後良好なものから、手を尽くしても救命できないものまでタイプはさまざまだ。特に再発・難治症例は治療が困難だったが、現在は新しい薬が使えるようになった。FLT3阻害剤のギルテリチニブ、キザルチニブの2剤だ。

 また、FDA(米国食品医薬品局)は、イボシデニブというIDH1変異に対する薬を承認した。日本での承認も期待される。このように特定の染色体異常や遺伝子変異を標的にする薬が次々に登場し、急性骨髄性白血病の治療は進化している。

 一方の急性リンパ性白血病は、池江さんが、この病気であることを公表したタイプだ。

「急性リンパ性白血病は長い間、打つ手のない病気でした。しかし現在、成人の約3割を占めるフィラデルフィア染色体に異常があるタイプの場合にはイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤というタイプの薬を使うことで、劇的に治療効果が向上しました」

 そう話すのは、東京女子医科大学病院血液内科教授の田中淳司医師だ。
「再発・難治症例についても、免疫療法剤ブリナツモマブと、抗CD22抗体と抗がん剤を結合させたイノツズマブオゾガマイシンの二つの薬が使えるようになり、治療予後が改善しています」(田中医師)

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