■遺伝子改変による免疫細胞療法も

 さらに、現在注目されているのが、CD19陽性の特定のタイプの病気に対して、自己のリンパ球を体内から取り出し、遺伝子導入して改変し、体内に戻してCD19を認識して攻撃するCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法という免疫細胞療法だ。

 チサゲンレクルユーセルという薬が3349万円と破格の薬価であることも話題になった。再発難治の急性リンパ性白血病では25歳以下の患者に対して保険で使えるようになり、一度の治療でかなりの効果が出ると言われている。現時点では全国でも数カ所の病院のみで治療を受けられるが、今後の普及や適応拡大が期待されている。

 急性白血病は、根治を見込むためには寛解状態で造血幹細胞移植を受ける必要がある。

 移植は、骨髄を提供してくれるドナーが見つかった場合に受けられる治療であり、患者にとってもかなりの負担を強いる治療だ。副作用での死亡率も2割程度あり、細心の注意が必要となる。

(文・伊波達也)

≪取材協力≫
がん・感染症センター 都立駒込病院 副院長 大橋一輝医師
東京女子医科大学病院 血液内科教授 田中淳司医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より