では、マスクによる皮膚のトラブルはどうしたらいいでしょうか?

 先の研究で興味深いのは、マスクによってかゆみを感じていながらも対策をとっている人が3割程度しかいないということです。かゆくても我慢すればいいと思っているのか、我慢できる範囲のかゆみなのか論文からは不明ですが、多くの人は対策なしで過ごしています。

 マスクによるかゆみの原因ですが、主に以下の三つがあげられます。

 マスクによる圧(摩擦)、化粧や日焼け止めに含まれる成分、そして汗です。

 まず、マスクのひもがあたる耳は耳切れを起こす人が多くいらっしゃいます。これには、なるべく圧がかかりづらいタイプのマスクに変えるか、マスク着用の時間を減らすのがよいと思います。

 時々、自宅から参加のWEB会議でもマスク着用の人を見かけますが、いつどのような状況でマスクが必要かしっかりと理解して着用するのがよいでしょう。個人的には、壁際のパソコンに向かって黙って仕事をしている状況でマスクが必要だとは思いません。

 次に、マスクで長時間口元が覆われるために普段使っている化粧品や日焼け止めもかぶれやすくなる可能性に注意したほうがよいでしょう。私はネズミを使ったかぶれの研究もしていますが、かぶれをより起こしやすくするために薬を皮膚に塗った後にテープでふたをします。人間の場合でも、塗った薬がとれないように、またしっかりと皮膚に薬が染み込むようにガーゼで覆う治療方法があります。

 化粧品や日焼け止めに含まれる成分でかぶれやすいものは、マスクで覆うことによって皮膚炎を起こすリスクがあります。マスクの下の化粧を軽めにしたり(場合によってはやめたり)、保湿剤だけを塗るのがよいでしょう。さらに、日焼け止めクリームがついてしまったマスクをそのまま何日も続けて着用するのは問題です。新しいものに変えるか洗濯をするなどして、マスクからかぶれのもととなる成分を取り除くことが重要です。

 マスクの下に汗をかくことでかゆみがでる人もいます。なるべく汗を洗い流し拭きとってください。

 かゆみを和らげるために水ですすぐ行為は、汗を落とすだけでなく皮膚の温度を下げる意味でも効果的です。また水ですすぐことで皮膚を清潔に保ちニキビ予防にも役立つと考えられます。

 新型コロナウイルス感染症との戦いは長期化することが考えられます。マスク着用に伴う皮膚のトラブルは夏の今の時期が一番起きやすくつらいものです。しっかりと対策を立ててこの夏を乗り切ることが大事です。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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