不要論が取り沙汰されている押印の慣習(c)朝日新聞社
不要論が取り沙汰されている押印の慣習(c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの蔓延でテレワーク推進の機運が高まったことを機に、「日本のハンコ文化がテレワークの弊害になっている」といった意見が目立つようになった。押印のために出社を余儀なくされる「ハンコ出社」も問題視され、「脱ハンコ」に着手する企業も増えている。

 ハンコに対して逆風が吹くこの局面で、「ハンコ議連」と呼ばれる議員連盟が、動きを活発化させている。正式名称は「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」だ。公式サイトがないため、活動状況などは一見してわからないが、そもそもハンコ議連とはいったい何なのか。そして、彼らがハンコ文化を守る理由は何なのか。ハンコ議連の幹部に「主張」を聞いた。

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 ハンコ議連の設立は、約1年半前にさかのぼる。2018年10月に出された設立趣意書には、発起人として竹本直一氏や城内実氏など、自民党議員の面々が名を連ねている。

 同議連の中心メンバーで事務局長を務める中谷真一氏は、議連設立の経緯をこう語る。「18年ごろに、政府内で『電子上の法人登記において法人印を廃止する』という議論が持ち上がったんです。その際、電子の法人登記に印鑑を活用してもらえるよう運動をしたのが最初の活動でした」

 所属議員を集める際は、印章の一大産地である山梨県や、印材に使われる木材「柘(つげ)」の産地である鹿児島県、取り扱い業者の多い東京などから、賛同する議員らを呼び込んでいったという。実際、中谷氏を含む山梨県を拠点にする自民党議員は、全員がハンコ議連に所属している。

「ハンコを残すべきだといった地元支援者の主張を国政に反映するのは政治家の使命。議連と業界団体との癒着といった憶測がありますが、それは絶対に違うと言いたい。そもそも印章の業界団体は、デジタル分野の業界団体よりもはるかに小さい規模で、利益の享受にはつながりません。業界団体を守るためではなく、印章はまだまだ貢献できるといった使命感から活動しています」(中谷氏)

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「サイン」ではダメなのか?