真船:私が入ったときはフジテレビが大人気で、テレビ局っていうのが就職先の花形だったんです。私が就活中に「3.11」が起きて、そこからテレビに対する世間の見方が少しずつ変わってきたんですよね。今の若い子はコロナの影響もあって、働くということに対する考え方が変わってきていますよね。

 今の時代、テレビ局員ってエリートでも何でもないですし、お金がいっぱいもらえてかわいい芸能人の女の子と付き合えるみたいなイメージもない。その中で同じ土俵で考えたときに、テレビの仕事をやるんだったら楽しそうな局でやりたいと思う人が増えたのかもしれないですね。

川島:真船さんは面白い星のもとに生まれているんだなと思います。彼氏とデートで大阪に行こうとしたら乗っていたバスが爆発したとか、普通の人が体験しないようなハプニングを死ぬほど持っているんですよ。それはお金では買えないし、努力しても無理なんです。不幸と言えば不幸なんですけど、表現する人間からしたらうらやましいと思います。神に選ばれているんですよね。

真船:たしかに友達からも「なんでそんなことが起きるの!?」みたいなことをよく言われていたので、川島さんにそう言っていただけるのはすごく嬉しいです。

川島:漫画という舞台があって何でも発散できるというのは相当強いと思います。特に、SNSとかで見栄を張る人が多い中では、その芸風が際立ちますよね。「こんなものを食べてます」とか「夜景に乾杯!」とか書いている人に対して「ウソつけ!」ってツッコんだり。そういうことができるのが面白いですよね。

真船:何が起こっても「あっ、漫画に描ける」と思うようにはなりました。

川島:『オンエアできない!』の続編をまた描く予定はあるんですか?

真船:いや、それはもういいかなと思っていて。もう制作の部署を離れてしまったので、過去を思い出しながら描く作業になっていて。今後も描き続けるとなるとリアリティが薄まってしまうと思うんですよね。だから、今後はもう少しいろいろな形でテレビの仕事をして、それを違う作品に生かしたいです。

 あとは、逆にテレビの仕事で私の漫画を生かしたいんです。例えば、キャラクターデザインをやったり、番宣の漫画を描いたり、番組で使うためのイラストを描いたり。テレビのことをだいぶネタにさせてもらったので、逆に私がテレビのために役立てることがあれば、それができるのがいいのかなと思っています。(構成/ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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