真船:やっぱり単純にお風呂に入れないとか、寝られないとかですかね。当時のADは今よりだいぶ過酷だったので、最高で20日間家に帰らなかったことがあって。そのときは洗面所で100円ショップで売っているシャンプーで髪を洗っていました。

川島:うわ、最悪ですね。

真船:そんなときに、仕事で憧れだったアイドルタレントさんにお会いする機会があったんですけど、ずっとお風呂に入っていなかったんですよ。だから「もうこの場で死にたい!」って思いました(笑)。

川島:漫画の中では真船さんはポンコツキャラみたいな感じでしたけど、実際の仕事ぶりはどうだったんですか?

真船:本当にできなかったです。ちょっと病気なのかもしれないですね(笑)。ADってすごい数の業務を同時並行でやらないといけないんですけど、私はそれがすごく苦手で。しかも「ひとつ忘れると死ぬ」みたいなことを同時並行でやっていたので、漏れなく死んでいたんです。

川島:漏れなく忘れていた?

真船:漏れなく忘れちゃうんです。寝不足で脳も極限状態になっていたので、首からメモをぶら下げるようにしていて、そのメモにやるべきことを書いてもらったりしていたんですけど、メモを下げていること自体を忘れちゃうんです。

川島:寝てないって怖いですね……。

真船:怖いですよ! 本当にポンコツキャラだったんです。だから、今の職場(注:現在、BSテレビ東京の編成部に出向中)に来たらようやく「真船、いいね!」と言ってもらえるようになりました。同時並行が減ったことでだいぶ楽になりました。

 あと、漫画を描いたことで楽になった部分もあります。テレビの制作って職人の世界なので、佐久間(宣行)さんみたいなみんなが知っているディレクターがいる一方で、仕事はそつなくこなすけれど、なかなかヒット番組に恵まれなかったり、企画が通らない人もたくさんいるんです。そういう人が歳を重ねると自分の立ち位置を考えなきゃいけなくなるんですよね。その中で私は局内で1人しかいない「漫画家」というポジションに行けたので、それで覚えてもらえたりとか、仕事を振ってもらえたりするようになったのがすごく良かったと思います。

次のページ
「テレ東が入社したい局のナンバーワンに」