もちろん石川も、そんな指揮官の思いに応えるつもりでいる。何より、ここ2年遠ざかっていた開幕マウンドに返り咲くことは、彼にとって目標の1つでもあった。

「シーズンオフからこの開幕投手を目指してやってきていますので、僕にとっては大きなモチベーションですし、12球団で12人しか上がれない(開幕)マウンドっていうのは特別なもの。そこのマウンドに立てるという幸せを感じながら、今までやってきたことが間違いじゃなかったんだとしっかり証明できるようにする舞台だと思って、アガることなく良い緊張感の下でなんとか投げ切りたいなと思ってます」

 既にさまざまなメディアで報じられているとおり、今日の試合で石川が開幕マウンドに立てば、40代ではプロ野球史上5人目。また、通算9回目の開幕投手は松岡弘と並び、金田正一の10回に次いで球団史上2位。金田は巨人移籍後も4回開幕投手になっていて、通算14回は日本タイ記録であり、セ・リーグ記録でもあるのだが、9回はこれに次ぐセ・リーグ2位となる。

 さらに、これまで開幕戦で5勝を挙げている石川が6勝目を挙げると、こちらは北別府学(元広島)に並ぶセ・リーグタイ記録。さまざまな記録もかかる今日のマウンドだが、心配なのは天気だ。

 もっとも「勝てれば何でもいい。チームが勝てる“駒”になりたいので、内容どうこうよりも勝ちたいですね」という石川は、ひとたびプレーボールがかかればどれだけ雨が降ろうとも、それを言い訳にすることなく必死に腕を振るはずだ。身上とする粘り強いピッチングで、新監督に最初のウイニングボールを届けるために──。(文・菊田康彦)

(文中敬称略)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。