40代の投手としては史上5人目となる開幕投手を務める石川雅規 (c)朝日新聞社
40代の投手としては史上5人目となる開幕投手を務める石川雅規 (c)朝日新聞社

 桜の季節はとうの昔に過ぎ、梅雨を迎えたこの時期になって、ようやく今シーズンのプロ野球が幕を開けようとしている。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の予定から実に3カ月遅れの開幕。それでも、今季から監督としてヤクルトの指揮を執る高津臣吾の「開幕投手」に対する思いは変わらなかった。

「彼の場合はいろんなことを経験してきて、いろんな辛い思いもして、いろんな良い思いもして、40歳になってもこの第一線で投げ続けられてる意味というのは、たくさん彼の中に詰まってます。これまでのキャリアも、誰も否定できない素晴らしいものだと思うしね。それでも今までの自分に満足することなく、謙虚に少しずつでも前進していこうっていう姿勢、言葉にするよりも彼が投げてる姿っていうのは、影響を受ける人がたくさんいると思います」

 指揮官が言う「彼」とは今年でプロ19年目、日本プロ野球では現役最多の通算171勝を誇る石川雅規のこと。今年1月に“不惑”を迎え、チームでは同学年の五十嵐亮太に次ぐ年齢となったが、大事な開幕戦の先発をその石川に託そうという考えは、感染防止のための自粛期間を経ても、高津の中で揺らぐことはなかった。

 いろんな辛い思いもして、いろんな良い思いもして──。石川をそう評した高津は、現役時代からその苦楽を共にしてきた。22歳のルーキー石川が12勝を挙げ、セ・リーグの新人王に輝いた2002年には、守護神として白星の過半数をセーブでアシスト。翌2003年に石川が「2年目のジンクス」も何のその、チーム最多の12勝をマークすると、自身は4度目の最優秀救援に輝く。同じチームで共に「良い思い」をした2人は、翌2004年に高津がFAメジャーリーグへ移籍したことで別々の道を歩むようになる。

 2人の邂逅はその2年後。高津のヤクルト復帰により再び同じユニフォームでプレーするも、2007年には共に「辛い思い」も味わう。石川はこの年、初めてプロの壁にぶつかり、入団から続けてきた2ケタ勝利が5年でストップ。39歳になった高津も、故障による離脱もあってキャリアワーストの防御率に苦しみ、シーズン最終戦の翌日に突然の戦力外通告を受けて退団。またもそれぞれの道を行くこととなった。

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2人が持つ“共通の武器”