■運動、栄養、社会参加、口腔ケアで脱フレイル

 フレイルは一つだけを改善するのではなく、複数の側面からアプローチすることが大切だ。それぞれのポイントごとに解説する。

▼運動=筋肉を増やそう
 フレイルの要因として重要なのが、サルコペニア(筋肉減弱症)だ。加齢によって筋肉量が徐々に減っていく。歩く、走るなどの日常の動作が不自由になるだけでなく、筋肉量の減少で消費エネルギーが減り、食が細くなって体重が減少する。また、免疫力が低下することも明らかになっている。

 指輪っかテストでおおよその筋肉量を測ってみよう。指輪っかとふくらはぎの間に隙間ができていたら、サルコペニアの可能性が高い。

「サルコペニアはフレイルの最大の要因です。高齢者が2週間、からだを動かさず寝たきりのような生活を続けると、7年分の筋肉を失うことがわかっています。たった2週間で要介護にぐんと近づいてしまうのです」(飯島医師)

 しかし、筋肉量は次のような工夫で、回復させることができる。(1)こまめにからだを動かし、代謝をよくして食欲を取り戻す。(2)歩くなどで足を使う。(3)たんぱく質を積極的にとって、筋肉を育てる。

▼栄養=たんぱく質をしっかりとろう
 筋肉を増やすために不可欠なのが、たんぱく質だ。どんなに運動を頑張っても、筋肉のもとになる栄養素であるたんぱく質が不足していては、筋肉は増えない。

 また、筋肉や骨に栄養素を運んでくれるビタミンDも意識してとりたい。日光に当たることも、体内でのビタミンDの活性化には不可欠だ。

 食習慣についての考え方を、ぜひ変えてほしいと、両医師は口をそろえる。中年期はメタボリックシンドロームを防ぐために、低カロリー、低脂肪、野菜中心の食生活が勧められていたが、老年期になると、それではいけないという。

「老年期になると代謝も変わり、生活習慣や環境も変化します。『おなかの脂肪を落とそう』と考えるのではなく、しっかりたんぱく質やカロリーをとって、フレイルの予防に努めることを第一にしてほしいです」(飯島医師)

(文・別所 文)

≪取材協力≫
東京大学 高齢社会総合研究機構機構長・ 未来ビジョン研究センター教授 飯島勝矢医師
東邦大学医療センター大森病院 リハビリテーション科教授 海老原 覚医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より