
大学入試は2~3月、大学入学は4月―――というこれまでの慣習が、来年は崩れるかもしれない。
【写真】安河内哲也さん「大学入学共通テストで、受験生の英語学習は大きく変わる」
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、多くの地域で教育機関の休校が2カ月以上続いた。受験を控えた高校生や保護者、教員からは、大学受験の勉強が進んでいない状況で来年の入試に間に合わないのではないかという声が、少なからずあがっている。
文部科学省も入試時期への対応について検討している。たとえば、総合型選抜(旧AO入試)は、休校の長期化で学習に差が出かねないので、少なくとも2週間後ろ倒しする方針を打ち出した。 萩生田光一文部科学相はこう話している。
「個人的には少し余裕をもたせたい。現場の声を聴き早急にまとめたい」(朝日新聞2020年5月30日)
大学入試センター試験に代わって新しく導入される大学入学共通テストや、大学個別の一般入試の実施時期も、先延ばしを検討する議論が文科省内でなされている。
高校の現場からはこんな声があがっている。東京都立八王子東高校の宮本久也校長はこう訴える。
「全体の入試日程を1~2か月先送りにし、大学入学も今回に限り5月頃になれば、授業時間が確保できる。生徒も納得して入試に臨めるだろう」(読売新聞2020年5月29日)
また、昨年末に発足した「大学入試のあり方に関する検討会議」のメンバーで、日本大学教授の末冨芳(すえとみ・かおり)さんは、臨時的な対応を提言する。
「コロナが、ぶり返す恐れもありますから、大学入試は冬だけでなく、来夏にも行うのも一案です。夏入試に合格した学生たちを入学させる臨時的な措置としての9月入学は、あり得ると思います」(朝日新聞2020年5月30日)
大学入試を5月、6月、あるいはそれ以降に実施しようという提案である。そうなれば、大学入学時期は6、7月にずれ込んでしまう。こんなことは今までにあっただろうか。
大学入試の歴史をさかのぼると、国立大学はその発足時から入試時期が先送りされていたことがわかる。戦後、新制大学の制度がスタートしたのは1949(昭和24)年のことだ。同年の入試日程は、私立大学と公立大学で2~3月、ところが国立大学はなんと6月8日以降だった。これは国立学校設置法(新制の国立大学の根拠を示す法律)の制定が、大幅に遅れたことによる。国は当初、同法を1948年度内に制定し、3月入試、4月入学を進める予定だった。しかし、国会での審議が滞り法案が年度内に通らなかったため、入試スケジュールが先送りされてしまったのである。