マウスガードが必要な場合には、スポーツ用品店などで市販されているものを購入する方法と、専門家のいる歯科医院で歯形をとってそれぞれの大きさや形状に合わせてカスタムメイドで作製する方法があります。

 市販タイプのものは、安価で手軽です。しかし、自分にピッタリ合わないものだと、異物感を感じたり、呼吸や発話がしにくかったり、かみ合わせがうまくいかないなど逆効果です。マウスガードにはさまざまな種類があり、厚さや柔らかさの違いもあります。競技の種類やポジションによっても形状が異なるうえ、微妙な調整により使い心地やけが予防の効果も左右されます。そのため値段は高くなりますが、歯科医院などで相談をしたうえで、自分に合ったものを作るのが望ましいでしょう。

 スポーツ歯学に関する調査・研究をおこなっている「日本スポーツ歯科医学会」では、「スポーツ歯科認定医」の養成や、良質なマウスガードの製作・提供に向けた取り組みをしています。また、「日本スポーツ協会」では、歯科医師の立場からプレーヤーの健康管理、歯科口腔領域におけるスポーツ外傷・障害の診断、治療、予防、研究にあたる、「公認スポーツデンティスト」を認定しています。「スポーツ歯科認定医」も「公認スポーツデンティスト」も、一般の歯科医療をおこないながらスポーツ歯科の活動をおこなっています。歯科医にマウスガードの相談する際には、これらの資格があるかを参考にしてもよいでしょう。

 歯科医も、スポーツの現場においてアスリートのパフォーマンス維持・向上のために力を発揮しています。また、子どもから高齢者まで地域住民のスポーツを通じた健康づくりを支援するとともに、歯の健康を守ることで健康寿命の延伸にも貢献しています。

 皆が安全にスポーツをするために、スポーツ歯科の重要性は今後さらに高まっていくことでしょう。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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