鉄道を題材としたり歌詞に鉄道が登場する音楽は、意外と多い。わが国では「鉄道唱歌」がその代表格といったところだが、ポップスやクラシックなどジャンルを問わず広く知られている名曲も多数。ときには音楽を通じて鉄道の世界に浸ってみるのも面白いのではないだろうか。
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■原点は電車ごっこの「ガタンゴトン」?
鉄道趣味の1ジャンルに“音鉄”がある。列車の走行音や車内放送などを収集したりて楽しんでいる人は意外と多い。私自身でいえば、寝台列車の車内放送を録音し、寝つけない夜などに枕元で再生したこともある。いま思えばマニア的なことをしていたものだと思うが、凝る凝らないは別として、列車の奏でる線路の響きは無意識のうちに心身に刻み込まれているような気もする。
そんな鉄道の心地よい音を表現した楽曲がある。たとえば、クレイジーケンバンドの「路面電車」では、そのものズバリに電車の線路の「ガタンゴトン」が歌われている。幼少のころ遊んだ「電車ごっこ」でもそんなリズムが歌われたものだったが、言い換えると、鉄道の象徴のひとつとして、あの「ガタンゴトン」という線路のリズムがあるようにも思える。
ところが、気がついてみると感じ慣れたはすの轍リズムと出会う機会が少なくなってしまった。言うまでもなく、線路の継ぎ目のないロングレール化の進展とともに轍のリズムが大きく変わったからだ。
私の場合、思い出と重なる鉄道の音は、貨物列車のリズムだろうか。遠くから機関車の重低音が響き近づいてくる。やがて電車とは異なる細かいリズムが大音響で奏でられる。1980年代まではワム80000形貨車に代表される二軸車が独自のリズムを鳴らしていたのだが、1両に台車が2つ付くボギー台車が主流となった今日ではなかなか出会えなくなってしまった。
■古くは「あずさ2号」などヒット曲に登場してきた鉄道
話を音楽に戻すと、狩人の「あずさ2号」や石川さゆりの「津軽海峡冬景色」も鉄道や鉄道の旅とは切っても切り離せない情緒で満ちた名作。狩人はほかに「磐越西線」を2006年にリリース、水森かおりが歌う「五能線」は鉄道好きなら思わず聞いてみたくなる曲といえそうだ。