■「俺はおまえを捨てねえ」は唐沢の本心!?

 そもそも、唐沢が今回の朝ドラに出演した理由は窪田が主演だったからという話もある。あるシナリオライターは言う。

「窪田が主演だからオファーを受けたと『エール』公式サイトのインタビューで明かしているんです。そこでは『才能ある彼を応援したい』とも語ってましたね。一方、窪田もそんな唐沢について『本当に感謝しかない』とWEBマガジンで告白。全員が気持ちよく過ごせる現場はあまりないそうなのですが、唐沢の場合は常にそうした現場を作っていて、背中を見させてもらっているのだとか。そんな、朝ドラが始まる前から2人の間に強い絆があったからこそ、お互いの演技がより光っているのだと思いますよ」

 ドラマウォッチャーの中村裕一氏は、唐沢のこれまでの歩みと「エール」における役割についてこう分析する。

「1992年に放送されたトレンディドラマ『愛という名のもとに』でブレイクし、福山雅治と共演した『ホームワーク』、大河ドラマ『利家とまつ』、さらには『白い巨塔』や『不毛地帯』などの重厚な人間ドラマなど、唐沢さんはまさに日本のドラマを支える名優と言えるでしょう。また、『トイ・ストーリー』シリーズではウッディの声を担当し、今年10月には海外ドラマの名作『24-TWENTY FOUR-』のリメイク版『24 JAPAN』が控えるなど、世界にも通用する実力の持ち主。『エール』ではそんな名優が主人公の父親といういわばサブキャラを演じるというだけでも驚きですが、福島弁を完璧にマスターし、しっかり存在感を残すあたりはさすが。家族を捨てて上京することを決意した裕一に対し『俺はおまえを捨てねえ』と誓ったシーンは、まさに父と息子の姿そのもので、胸を打たれた人も多かったと思います」

 視聴率が20%を超える日も多く、好調をキープしている「エール」。現在は東京編に突入したが、そんな2人の関係性を思いながらドラマを見るのも面白いかもしれない。(丸山ひろし)

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丸山ひろし

丸山ひろし

埼玉県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集業務に従事。その後ライターに転身し、現在はウェブニュースや、エンタメ関連の記事を中心に執筆している。

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