駒大苫小牧高校でプレーしていた時の伊藤大海 (c)朝日新聞社
駒大苫小牧高校でプレーしていた時の伊藤大海 (c)朝日新聞社

 新型コロナウィルスの感染拡大でプロ野球はいまだに開幕のめどが立たないが、アマチュア野球も同様に大きな影響を受けている。社会人野球は早々に7月開幕予定だったとその代表を決める対象大会の中止を決定。高校野球、大学野球も同様に4月中旬からは全ての公式戦が行われていない状態だ。

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 この事態によって、頭を悩ませているのはプロのスカウト陣だろう。冬のトレーニング期間を経て、春から夏にかけて大きく伸びる選手が多いが、その視察の場が完全に失われてしまっているのだ。この後、大会が行われたとしても11月に行われる予定のドラフト会議に向けての判断材料は、例年と比べて少なくなることは間違いない。そこで今回は、仮にここから何もプラスする材料がなかったとしたとしても1位指名される可能性が高い選手はどんな顔ぶれになるのか、占ってみたいと思う。

 まず投手。昨年秋の時点でナンバーワンの評価になると見られていたのが山崎伊織(東海大)だ。150キロを超えるストレートと打者の手元で鋭く変化するスライダーは伊藤智仁(元ヤクルト)を彷彿とさせ、総合力では大学ナンバーワンと見られていた。しかし3月に昨年痛めた右肘の靭帯が部分断裂を起こしていることが発覚。トミー・ジョン手術は回避して、夏以降の復帰を目指すこととなったが、その回復具合をチェックできないとなると、いきなり1位で指名する球団はない可能性が高いだろう。

 山崎が厳しいとなると、現時点でいきなり1位指名になる可能性が高いのが伊藤大海(苫小牧駒沢大)と栗林良吏(トヨタ自動車)の二人だ。伊藤は駒沢大を1年秋に中退して苫小牧駒沢大に入学し直して才能が開花。2年春に出場した大学選手権で見事な投球を見せ、それ以降は大学日本代表の常連となっている。その最大の魅力は150キロを超えるストレート。数字以上に回転の良さを感じるボールで、一昨年、昨年の日米大学野球ではいずれもイニング数を上回る三振を奪っている。ピッチングスタイルは“炎のストッパー”と言われた津田恒実(元広島)に重なるものがあり、打者を圧倒する気迫も大きな魅力だ。リリーフが手薄な球団は喉から手が出るほど欲しい投手と言えるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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