当たり役がかえって災いしたという意味で、93年のドラマ「ポケベルが鳴らなくて」(日本テレビ系)の裕木奈江と並ぶ悲劇だろう。

 とまあ、そんな副産物まで生まれたのも、このドラマが時代にシンクロした結果だ。大スターとなった女優や歌手のことを「時代と寝た女」と呼んだりするが、これはまさに「時代と寝たドラマ」だった。

 では、誰がドラマと時代を結びつけたかといえば、作り手たちはもとより、原作者である柴門の存在も大きい。彼女は米国のミュージシャン、ポール・サイモン(サイモン&ガーファンクル)の大ファンで、ペンネームもそこに由来する。豊かで自由で、個人主義的であるがゆえのむなしさも漂う米国的な文化や感性に憧れていたようだ。アフリカ育ちの帰国子女で米国に留学したりするリカにも、そのあたりは反映されているのだろう。

 そして、平成初期というのは日本がそんな米国的なものに最接近した時代でもあった。作り手たちは、柴門の世界に触発され、米国型の自立志向の強い女のやせがまんの美学のようなものを描こうとし、そこにかなりの女性がハマったのである。

 ただ、誰もがそうだったわけではない。ハマってもおかしくない世代だった、筆者の妻などは、リカのことを「貞操観念がない」として嫌っていた。まして、バブル崩壊により、世の中も女性たちもイケイケではいられなくなっていく。あれから約30年がたった今、若い女性の恋愛観は当時より保守的なのではないか。

 今回のリメイクでさとみを演じる石井も、公式サイトでこんな発言をしている。

「台本を読んだ時に素直に関口さとみへの共感が多かったので、実際演じる時もその共感した事を意識しながらお芝居しました」

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「時代のあだ花」となったドラマ