漢方専任教員がいる大学は37%(同29%)だった。ほかにも必修授業回数の学年別分布など、さまざまな項目でのアンケートが実施された。

 さらに、教育現場で早急に解決すべき課題として、漢方教育を担う指導者の養成70%(同65%)、カリキュラムの標準化58%(同63%)、わかりやすいテキストの作成52 %(同51%)が上位に挙がり、早期体験学習の導入10%(同19%)、参加型臨床実習を行うための環境整備29%(同25%)、卒後初期臨床研修や後期研修への漢方教育の導入34%(同33%)などが数値として示された。

 2回の調査結果を比較すると、新カリキュラム導入前後で、必修の漢方授業は7・25回から8・28回へと増加し、専任教員がいる大学は29%から37%へ、実習を必修授業に取り入れている大学は15%から23%へと増加した。

「今回の調査で、漢方教育が医学部卒前教育に定着しつつあることは示唆されました。とはいうものの、依然として漢方医学に対する取り組みは、大学間で温度差があることもわかりました。漢方教育を確立するには、引き続き漢方教育を担う指導者の養成、カリキュラムの標準化、わかりやすいテキストを作成していくことなど、いくつかの重要課題が明らかになりました」

 そう総括する新井医師は、「神奈川県4大学医学部FDフォーラム」を皮切りに、「日本漢方医学教育協議会」という全国の大学医学部の漢方医学教育担当者が集結する組織への参加により、漢方医学の基盤カリキュラムやモデル授業( 60 分×4コマ)などの作成に尽力してきた。

■卒後のモチベーション維持が課題

 そして、新井医師は、卒前の漢方教育のみならず、卒後の漢方教育の実態も調査した。全国の臨床研修病院1011施設のうち816施設から回答を得た「臨床研修病院における漢方医学教育の全国調査」と、東海大学医学部第32期卒業生のうち93人から回答を得た「初期臨床研修医の漢方医学に関する現状調査」を行い、英語の論文として発表した。

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臨床研修病院によって漢方教育には温度差が