※週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より
※週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より

 漢方に対するニーズが高まっているが、漢方医学が普及するためには、当然ながら大学医学部における漢方医学の教育が重要だ。全国82大学医学部の漢方医学教育に関する調査研究から、その現状と展望を取材した。好評発売中の週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』からお届けする。

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「全国大学医学部における新カリキュラムに基づいた漢方教育の現状調査」という研究がある。

 その研究のリーダーである、東海大学医学部専門診療学系漢方医学教授の新井信医師はこう説明する。

「この研究の目的は、医学教育新カリキュラムに基づいた全国の大学医学部における漢方教育の現状を調査して、漢方教育を確立するために何を解決すべきか、その課題をつまびらかにすることでした」

 2019年3月、全国82大学の医学部に、郵送による記名式アンケート調査を実施した。11年にも同様の調査を行っている。

「なぜ今回2度目の調査を行ったかといいますと、この間、いくつかの特筆すべき出来事がありました。ひとつは、医学教育に『世界医学教育連盟』が提示するグローバルスタンダードに準拠した新カリキュラムがどう変化したかを検証したのが同研究だ。導入され、臨床実習が増え、4年次後期から臨床実習を始めるようになりました。医学教育分野別評価基準のなかに『補完医療との接点』と明記されたため、日本では漢方医学教育の普及が期待されています。もうひとつは、18年、WHO(世界保健機関)のICD -11(国際疾病分類第11回改訂版)に東洋医学が入ったというトピックがありました。これは西洋医学の分類のなかに初めて東洋医学が組み込まれたという、画期的な出来事でした」

■必修授業数や専任教員など定着しつつある漢方教育

 このような漢方医学にとっての“追い風”のなかで、大学ごとの実態はどう変化したかを検証したのが同研究だ。11年の結果と今回の結果を比較した。

 有効回答数は82。回答率は100%だ。卒業までの6年間で必修の漢方授業回数は1回から32回。平均8・28回(11年は7・25回)。中央値は7・5回(同6回)。実習を必修授業に取り入れている大学は23%(同15%)、テキストを使用しているのは15%(同24%)、標準テキストがあれば使用したいと考えるのは74%(同74%)。

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いくつかの重要課題が明らかに