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きれいさっぱり引退 「ブルゾンちえみ」とはいったい何だったのか?

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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藤原史織(ブルゾンちえみ)(c)朝日新聞社

藤原史織(ブルゾンちえみ)(c)朝日新聞社

 意外に思われる人もいるかもしれないが、実は『おもしろ荘』の出演後、彼女はそれほど頻繁にはテレビに出ていなかった。出発点となった『ぐるナイ』と、同じ局の人気番組『行列のできる法律相談所』を中心に、ごくごく限られた番組に出ていただけだった。旬の芸人としてオファーはもっとたくさんあったはずだが、意図的に露出を抑えていたのだろう。

 いろいろな番組で何度も何度もネタを見せてしまえば、その分だけ消費されるスピードも速くなる。そこで、限られた番組だけに出ることで希少性を高めて、一回一回のインパクトを大きくすることを選んだのだ。そして、バラエティの枠を一気に飛び越して、ブルゾンはドラマデビューを果たした。

 2017年4月から『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)でドラマ主演を果たし、7月には『24時間テレビ』(日本テレビ系)でチャリティランナーを務めた。ブレーク芸人の瞬間最大風速としては史上まれに見る数値を叩き出していたと言っていいだろう。

 飛行機に例えるなら、この時点でブルゾンちえみは離陸に成功していた。あとは一定の高度を保ったまま安定した飛行をするだけだ。彼女は『ヒルナンデス!』『行列のできる法律相談所』などのバラエティ番組に出演して、堅実なタレント活動を続けた。

 ブルゾンはもともと映画、音楽、ファッションなどに興味があり、海外志向が強かった。そんな彼女は日本のテレビ業界で「当たり障りのない女性タレント」として活動を続けることに限界を感じていたのではないか。

 ブルゾンちえみというプロジェクトには着地点がなかった。芸人として売り出していない以上、人気が下がった後に落ちぶれた姿をさらけ出して自虐トークをするのは似合わない。つまり、これは初めから終わることが決まっていたプロジェクトだったのだ。

 ブルゾンが海外に留学するために芸人を引退すると発表したとき、私はそれほど不思議には思わなかった。彼女は以前からそういう方面に関心があるというメッセージを発信し続けていたからだ。

 藤原史織という1人の女性は「ブルゾンちえみ」というプロジェクトの最重要メンバーだった。彼女がもともと持っていた資質が「キャリアウーマン」のネタとして結実し、そこから発展してあの空前のシンデレラストーリーが生まれた。ガラスの靴を脱いで走り出した彼女はこれからどこへ向かうのだろうか。(作家・ライター・お笑い評論家 ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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