その他ではヘンゾ・グレイシーを判定で下し“グレイシー狩り”に成功した田村潔司も、MMA黎明期から活躍したプロレス出身のファイターだ。総合格闘技がメジャーになる前からフランク・シャムロック、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラといった強豪と戦い、戦績は48戦して33勝13敗という記録を残した。桜庭とは違い“無骨”なファイトスタイルでエンターテイメント要素は少なかったが、田村も間違いなくプロレス強しを印象づけたファイターである。

 日本に限らずプロレスの本場アメリカでもWWE出身のブロック・レスナーが総合格闘技で存在感を示した。キャリア第4戦目でMMA界の“レジェンド”ランディ・クートゥアを倒し、早々とUFCのヘビー級王者になると、その後も2度王座を防衛。総合格闘技でのキャリアはわずか9戦のみだったが、プロレスラー=強いを世間にアピールすることに成功している。

 また、戦績は抜きとして“名勝負”を生み出すのもプロレス出身ファイターの特徴でもある。ブラジルの強豪マルコ・ファス相手に番狂わせを演じたアレクサンダー大塚、総合格闘技界のレジェンドであるドン・フライと壮絶な殴り合いを演じた高山善廣ら忘れられない戦いは多い。

 このように総合格闘技の黎明期を引っ張ったのは間違いなくプロレス勢だった。今では競技としての地位を確立し、どの選手は初めからMMAファイターになることを目指しトレーニングするケースが多くなったが、かつては“異種格闘技戦”の意味合いもあった総合格闘技で存在感を放ったプロレスラーたちの功績は計り知れない。