なぜ財務官僚は改ざんに手を染めたのか。取材班で当時の近畿財務局の担当職員らに接触を重ねたが、みな一様に口は堅く何かにおびえているように感じた。国有財産を扱う管財部門に所属していた複数のOBにも取材した。OBたちは「私たちは誤字脱字でも、決裁を取り直して決裁権者に回すと教育された。僕らの常識を覆すことが行われていた」「公文書改ざんは、常識で考えたら刑法にも触れる話。公務員だけで決断したのか、疑問が残る」などと語った。

 現役時代は取材拒否だったが、退職直後に応じてくれたあるOBは「直接改ざんに携わった職員は悩んでいるふうに見えた。現場としてはじくじたる思い。改ざんは、本省が(自分たちの)説明やストーリーに沿うようにしたかったからじゃないか」と打ち明けてくれた。

 しかし結局特捜部は、佐川宣寿・元財務省理財局長を始めとして、告発された財務省関係者ら38人についての背任や虚偽有印公文書作成など、全ての容疑で不起訴にした。

 国有地には校舎や体育館になる予定だった建物が残されたままだ。値引きの根拠とされた地中ごみの写真には、野党議員から「不鮮明で根拠にならない」と疑義が出ており、問題の決着はまだついていない。そして公文書改ざんも全容は明らかになっていない。真相を求め、今後も取材は続く。(朝日新聞大阪社会部・吉村治彦)