森友学園が建設していた小学校の校舎やグラウンド=2019年3月29日午後、大阪府豊中市 (c)朝日新聞社
森友学園が建設していた小学校の校舎やグラウンド=2019年3月29日午後、大阪府豊中市 (c)朝日新聞社

「財務省による公文書改ざん」をめぐり、改ざん作業を強いられ、自ら命を絶った近畿財務局職員の遺書が初めて公開された。遺族は国と佐川宣寿・元財務省理財局長を提訴し、改ざんの詳しい経緯が明らかにされることを望んでいる。

 朝日新聞取材班が出版した『権力の「背信」――「森友・加計学園問題」スクープの現場』(朝日新聞出版)には、森友学園の国有地取引をめぐる問題から「公文書改ざん」に至るまでの取材記録が詳細に記されている。民主主義の根幹を揺るがす事態にまで発展した問題の、そもそもの「きっかけ」とは何だったのか。森友問題の端緒となる事実を掘り起こしスクープした、朝日新聞大阪社会部記者の吉村治彦が振り返る。

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 もう3年も前になる。森友学園への国有地売却に絡む問題を最初に報じたのは、2017年2月9日付朝刊だった。きっかけはその数カ月前の夕方、当時私が支局長を務めていた豊中支局(大阪府豊中市)に、取材先の女性からかかってきた、1本の電話だった。

「豊中市が以前、公園用地として取得を希望して断念した国有地が、ある学校法人に売却されたようだ。しかも財務省が売却金額を非公表にしている」

 学校法人は森友学園。その土地で小学校の開設を目指していて、名誉校長には安倍晋三首相の妻の昭恵氏が就任していた。背景はよく分からなかったが、「何かありそうだな」と素朴な疑問から取材を始めた。

 財務省近畿財務局に取材してみると、公共目的での利用で土地を売却する「公共随意契約」で、少なくとも過去3年間で価格を非公表にしているのは森友学園だけとのことだった。「学校運営に影響するので非公表にした」となんとも不可解な説明で、担当者は明らかにこちら側の取材を警戒している様子だった。

 旧大蔵省理財局の通知では、公平性の観点から、国有地の売却価格は公表が原則とされている。国有地を購入して価格を公表されていた他の学校法人や社会福祉法人の担当者は「財務局からは、『国有財産なので公表しますね』と言われた」などと取材に答えた。売却価格を非公表にしたうえ、十分な説明もしない財務省の対応に、「何かおかしなことが起きている」と記者魂に火がついた。売却価格の開示を求めて財務省に情報公開請求もしたが、やはり非公開とする決定だった。

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